セブン - キャバ嬢歴7年の三十路レディ

しばらく流浪を続けていましたけれど、最近はようやく行く店が固定しつつあります。
吉祥寺の「I」という格安店で、この店に指名で行くことが多くなりました。私が行くのは夜の11時とか12時とかの遅い時間が多いので、さほど格安の恩恵には与っていませんが、この店は午後8時30分までに入れば、フリーで2千円です。以後、1時間ごとに3千円、4千円、となるわけですが、一番高い時間帯でも4千円で、指名料も1千円。気楽です。しかも、ジンロのボトルが1千円なので、女の子の飲み物に関してもほとんど苦慮する必要がありません。
こういう格安店で、女の子の質をああだこうだと言っても仕方ありませんが、正直に言えば、確かに女の子の質は決して高くはありません。
初めてこの店に行ったのは夏前だったと記憶していますが、私は引きが良かったのか、この店の中でも多分可愛い方だと思われるCさんというまだ19歳になったばかりの女の子がつき、それから彼女との付き合いは続いています。
まあ、ルックスうんぬんより、さっぱりした性格と、あとは異常にお酒を飲める彼女の体質が気に入りました。ジンロ1本開けてもケロリとしています。
で、まあ、他の女の子たちはわりとアレだというのもあり、Cさんは結構人気があって、指名もよく重なります。必然、ヘルプの女の子たちと飲んでいる時間も長くなるわけなんですが、先日行った時についたヘルプの女性が30歳でした。
席に来た時に「結構いってるのかなあ」とは感じましたけど、二十代中盤くらいなのだろうなあと思っていました。なんとなく
「おいくつですか?」
と訊くと、
「30です」
とサラッと答えました。
まあ、30歳であること自体には別に問題はないし、こちらも三十代の後半であるわけなのだから、むしろ安心して話をしていたのですが、
「どのくらいやってるんですか?」
「7年目です」
「あ、結構長いんですね。このお店に来たのはいつですか」
「この店で7年なんです」
「え?」
「この店だけだから、私」
「え?」

さすがに驚きました。
7年間、水商売をやっていること自体はものすごく珍しいというわけでもないですが、キャバクラで、同じ店に7年間いるというのは聞いたことがありません。しかも初めて入ったお店がその店で、そのまま同じお店に7年間在籍しているというのです。
「ということは、23の時から?」
「そうだね」
「それは……長いね」
「うん、なんかいつのまにかそうなっちゃったね」
「7年ずっとこのお店にいるんだ」
「そう。昼もずっと同じデパートで働いてるし」
「え?」
「昼は○○デパートで働いてるのよ」
「いや……あの……昼と夜、7年間も両立させてるの?」
「そう」
「それは……すごいな」
「そうかな」
「なんかお金稼がなきゃいけない事情があるの?」
「ううん。そんなわけじゃないけど、なんとなくね」
この時は私の指名した子が2人くらいのお客さんと被さっていたみたいで、このヘルプの子とは30分以上話していたんですが、かなり話し込んでしまいました。女性の30歳といえば、結婚してても少しもおかしくない年齢だし、だいいち、私自身、その年には結婚していました。
「したくないわけじゃないけど、結婚したいからってだけの理由でむりやり相手を探すのはイヤでしょう? 今は彼氏もいないし、自然に相手が見つかれば、それはその時に考えるけど」
「でもさ、7年間、昼も夜も働いてたら、相手見つける暇がないんじゃない? たとえば、昼間の職場でちょっと気に入ったりした人がいても、普通だと夜飲みに行って、とか、そういう展開になるわけだけど、それもできないだろうし」
「そういう時はちゃんと飲みに行くよ(笑)」
「7年間いちども彼氏がいなかったわけじゃないんでしょ?」
「そりゃそうだけど、長続きはしなかった」
「お店では口説かれない? きみ、美人だし」(ちょっとお世辞入ってます)
「たまにはあるけど……やっぱりねえ」
「いつまで続けるつもり?」
「うーん、そろそろだとは思ってるんだけど、ここまでくると、やめるのも勇気いるっていうか……居心地はいいわけだから」
まあ、結婚に対しての価値観とか、その辺りに関しては人それぞれなので、ある意味どうでもいいんですけれど、問題は7年間もこの店にいる彼女が、現実にこうやってヘルプ回りをしているということのような気もしました。
7年間というのは決して短い時間ではありません。彼女に聞くと、この7年間でお店のシステムも大きく変わったのだそうです。今の格安店になったのは今年になってからの話だそうで、とにかく簡単にいうと「年々安くなっていった」のだとか。大体、幹部やスタッフレベルでも7年間も在籍している人は少ないでしょう。この店の生き字引のような存在かもしれません。
戻ってきた指名のCさんに、
「あの人、ここに7年間いるんだって」
「うん。○○姉さんはここで一番長いから」
「いい人?」
「うん」
「憧れる?」
「え?(苦笑)」
この店にはこれからもたまに行くはずです。この30歳の方の動向も気にしつつ飲むことになるのでしょう。