NOFIA'S COLUMN


部長


このコラムにも出てくるある客引きさんの話です。
彼はとても体格のいい……端的にいうと、単に太っているだけなんですが、吉祥寺の南口辺りをいつもうろうろと徘徊しています。彼は「I」というお店と「B」というお店の両方の客引きをやっていて、私は彼に認識されてしまっているせいか、あの辺りを歩いていると、よく声をかけられます。
先日もキャバクラではなく、ただ友達とあの辺りで飲んだ帰りに声をかけられました。

「こ・ん・に・ち・は」と笑顔で近づいて来る彼。もちろん、私としては嬉しくもなんでもないわけで、「ああ、こんにちは」とか適当な相槌を打って、そのまま歩き去ろうとしました。駅の方まで、しばらく彼は追尾してきたのですが、酔っていたせいもあり、「おじさんもトシだし暑いのに、客引き大変だね」 などとちょっと小馬鹿にした言い方をしてしまいました。すると、おじさんは、
「オレは正確には客引きじゃねえんだよ」と非常にくだけた言い方で返してきました。
「じゃあ、何なの?」と聞き返すと、彼は一枚の名刺を私に差し出しました。

そこには、

「○○○○株式会社 部長 ○○○○○」

と書かれていたのです。名刺の裏を返すと、この会社は「I」や「B」どころではなく、武蔵野市と立川に4軒のキャバクラと、一軒の居酒屋を持つという割と大きなチェーン展開をさせている株式会社だということも分かりました。彼はこの会社の部長だというのです。
一軒のキャバクラの営業部長とかではありません。株式会社の正式な部長です(ただ、部長にしては「何部」の部長なのかがよくわかりませんが)。
「会社の部長さんの仕事って、客引きなの?」と尋ねると、「昼は昼でいろいろやってんだよ」とのこと。「いやー、○○○さんが会社の部長さんとは知らず失礼しました」(別に謝る必要はないが)と謝ると、「じゃあ、1時間だけ寄ってってよ」と、彼はまた単なる客引きに戻って、私も「じゃあ、1時間だけお邪魔いたします」と、単なる客になってしまったわけですが、あの辺りにウロウロしている人たちの中にもいろんな立場の人がいるのだなあ、と実感した次第です。

これはまた全然関係のない話ですが、別のチェーンで、吉祥寺だけでも4店舗以上の店を持つある社長は、昨年の武蔵野市長者番付の3位だか4位だった のだそうです。まあ、店の女の子から聞いたことなので、本当かどうかは知りませんが、うまくやれば、かなりうまくいってしまうものなのだなあと、これまた思いました。