学歴キャバクラギャル

  

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「今週は自重する」

と、私は先日、コラムでそのようなことを意味する文章を書いたはずです。個人的には誓いといってもいいものでした。
しかし、その誓いはやはり守られませんでした。
自重するどころか、月曜から昨日の木曜に至るまで4日のうち3日間キャバクラに行っている(店は5軒)という、どうしようもない状態に陥っています。
昨日は何となくフリーになってしまいました。
本当は行く店が決まっていたのですが、道を歩いていたら、手にシャネルか何かブランドもののバッグ(女物)を持ち、サングラスをかけ白いスーツを着たホストかヤクザのような、長身で金髪の青年が私の前でピタッと歩を止めました。私は一瞬怯えました。すると、青年はサングラスを外し、

「お久しぶりです。F店の○○です。今日はどちらへ?」

ときました。
どうやらキャバクラのボーイさんのようです。しかし、キャバクラのボーイがサングラスをかけて、白いスーツを着ているわけがありません。

「ボーイさんなの?」
「やだなー、覚えてません? 前にチェーンの○○店にお連れしましたよ」
「なんでそんな格好してるの?」
「自分、今日休みなんですよ。で、ブラブラしてたら偶然歩いてらっしゃったんで」
「休みなら別にお客さん連れていく義務はないでしょ?」
「いやーまあ、それはあれなんで」
「そのバッグ、女物だね」
「いやー、自分のっス」
「これから女と遊びに行くの?」
「いやー、ほんと、自分ひとりもんっスよ。実はオレ、家出少年なんスよ」
「家出少年って年じゃないだろ」
「まあ、たまには来てくださいよ。最近いい子たくさん入ったんで、ぜーったいにいい子つけます。自分保証しますよ」
「いやまあ、保証はしなくてもいいけど」
「いやー、自分信じてください」
「いくら?」
「6千円のところ4でいいっす」
「4……」
「全部込みですよ。ポッキリです」
「いやまあ、いいけど」

ということで、この店に行きました。以前、一度行ったことがありますが、その時には実にひどい目に遭った(潔癖症の女の子がついた) 店ですが、この青年の仕事熱心ぶりを信じて行ってみることにしました。しかし、休みの日でもこの青年にはポイントがつくのかどうかは大いに気になるところ です。ただ働きにならなければいいのですが。

で、実はここまでは前振りです(長い!)。

ここでついた女の子の話なんです。
とてもノリのいい子で、ついた途端、話は弾みました。20歳の大学生ということで、それ自体はよくあることなので、どうということもなかったのですが、話が進むにつれて、この子の尋常ではない部分が浮かび上がってきたのです。

「結婚してんの?」(女の子)
「いや、オレ、バツイチだから」
「あ、私も」
「バツイチ!?」
「シッ。お店には内緒だから」
「ハタチだろ? 大学生だろ?」
離婚してから大学に行ったの
「いくつで結婚して、いくつで別れた!」
18で結婚して19で別れた
「まあ……それならアリ、か。相手はどんな人?」
「17の時にこういうお店で知り合ったの」
「こういうところ? キャバクラ?」
「うん」
「お客さんか……っていう以前に17歳だとキャバクラ、ダメだろ」
「だからお店にはウソついて」
「じゃあ、昼は高校行って、夜はキャバクラか……。どうしようもない高校生だな」
いや、高校、16でヤメちゃったから
「え?」
「半年くらいしか行ってない」
「あんた、大学生って言ってなかった?」
「そうだよ。学生証見る?」
「いや、それは別にいいけど……高校卒業してないんじゃ……もしかして、大検?」
「うん」
「うわー、よく受かったな。じゃあ、一生懸命勉強したんだ?」
「いや、勉強しなかったんだけど、なんか受かった
「ぶっつけで?」
「うん。っていうか、高校自体は結構いいアレだったから。そんなに頭もアレじゃなかったから」
「でも、大検って大変だろ」
「12科目もあんなのには驚いたけどね」
「ちなみにどこの大学?」
「○大」
「え?」

それは私が十数年前に行っていた大学と同じでした。

「受験勉強大変だっただろ?」
ほとんどしてない
「え?」
「あたしも絶対落ちると思ってたんだけど、受かっちゃったからさ」
「何学部?」
「政経」
「…………」
「結婚してる時はこんなこと考えもしなかったんだけど、離婚してみたら、あたし、ただの中卒じゃん? ヤバイと思って」
「しかし、高校ヤメたやつはいくらでも見たけど、そこから大学生になったやつは珍しいな」
「違うのよ。あたし、高卒ならそれでよかったの。でもさー、あたし、知らなかったんだけど、大検って、受かればそれで高卒の権利もらえると思ってたら、そうじゃないの。あくまでも大学を受験する権利を持っただけに過ぎないのよ。大検は学歴扱いではないのよ」
「じゃあ、大学に行かなければ、意味ないんだ?」
「大学を卒業しなければ意味ないのよ。だったら大学受けるしかないじゃない?」
「きみさ、その程度の気持ちで○大受けて、それで合格すんなよ……」
「まあ、高校ヤメてから、親に援助してもらってないから結構大変なんだよ」
「学費は?」
「自分で払ってるよ」
「まあ、頑張って卒業しなよ。つまり、アレだろ? 卒業して初めて、きみに大卒の権利が派生するんだろ?」
「そうなんだよねー。実際、大学かなりかったるいんだけど、行くしかないしねー」
「オレなんて、その大学ヤメてっからね」
「そうなんだ?」
「うん。きみはちゃんと卒業しなよ」

というわけで、私の大学中退という事実もバレたりしましたが(実際はたぶん除籍)、いずれにしても、この子の話は他にも書ききれないほど面白いものが多く(結婚していた相手もダメなやつで、結婚してからもキャバクラで働かされていて、生活のスレ違いになったのが離婚の原因だった、とか)、話題的にはかなり楽しめたひとときではありました。
それにしても、私は一般論としての学歴には何の思い入れもないんですが、この子の頭の良さぶりには感銘を受けます。

まず、大検というものですが、なんと12科目の試験を受けなければならないもので、下手な入試などよりかなり厳しいものになっています。

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なんでこんなことを知ってるかというと、実は以前知り合いだったキャバ嬢も高校を中退してしまった子で、大検を目指してしましたが、専門の学校に1年間通っていて「こんなことなら普通に高校卒業しとけばよかった」と嘆いていたのを聞いていたからです。そして、大検もさることながら、彼女の行っている大学も、私がそうだったように(まあ、私はバカでしたが)、かなりの受験勉強をしなければ入れないところのような気もします。
そのふたつをほとんど勉強ナシにクリアしているという事実。
彼女の頭脳自体が明晰であることは、話の内容からもよく分かります。それだけに、キャバクラ嬢として目の前にいる彼女になんとなく違和感を覚えてしまったのも事実です。

「でも、大学って、なんだかんだとお金かかるねー。本当は国立行きたかったんだけど、やっぱり私立、入試ラクだしさ」
「私大は金かかるよな。まあ……オレにできるのは指名することくらいか」
「今度来たら指名してね……って、ああ、でも、あたしこの店もうすぐヤメるんだけどね」
「あ、そう。他の店に行くの?」
「うーん。いろいろと考えてはいるけど、最悪、風俗とかも考えなくちゃダメかも」

と彼女は言ってました。
まあ、どんな仕事をやるにしても、無目的ではないのですから、それはそれでいいと思います。頑張ってください。