キャバクラ 天国と地獄

  

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先日、江古田で知り合いのパーティがあり、それがあまりにもつまらないので、途中で友人と2人抜け出しました。

「どうしよう。飲みにでも行く?」
「ここって中野近いよね」
「キャバる?」
「久々に中野というのも悪くないかな」

ということで、かなり久々に中野のキャバクラに行くことになりました。

提案者は友人の方です。私の方から言い出したわけではありません。
そして、この日は「フリーでGO!」などにも書かれていることですが、複数でキャバクラに行けば、誰かはいつかは必ずハズレを引く、という原則を忠実に具現化した日になってしまったのですが、その餌食は提案者の彼でした。

中野着はすでに午後10時。

北口の、われわれがかつて「黄金の三角地帯」とか「センデル・ルミノソ」と呼んでいたキャバクラ通りは今も健在でした。しかし、店の新旧交代も随分と進んだようで、見知らぬ店もたくさんありましたし、かつてあった店で消滅しているのもありました。

まあ、前振りはどうでもいいとして、客引きと交渉して、1時間4000円だという「P」というお店に入りました。このビルには4〜5軒のキャバクラがひしめき、しのぎをけずっているという熾烈な場所です。このお店にした理由は簡単で「女の子もハウスボトルを飲めるから」です。つまり、女の子のドリンクの心配ナシに気楽に飲めるということですね。ウイスキー、ジンロ、ブランデーと3種類あるドリンクをどれでも女の子は飲むことができます。

当然、フリーで入ったのですが、私の引きは抜群でした。とにかくものすごい美少女が一人、そして更にわりときれいな女の子がもう一人、で、テーブルの向かいにも一人。友人にも女の子が一人、ということで、何だかよくわからないのですが、我々2人に対して3人の女の子がつくという非常に賑やかな席となりました(最高時は瞬間的に4人の女の子がいました)。

フリーなのでたまに女の子はチェンジするわけですが、その時に私は実は気配を感じていました。その気配とは、

友人の方にはひどいのばかり行っている。

という悲しい事実です。
と同時に、    私の方にはとにかく可愛い子ばかり来る。

という事実にも気付いていました。

この2点に私はかなり早い段階から気付いていましたが、黙殺していました。
この日は入店前にパーティで相当お酒を飲んでいたこともあり、お酒は控えておこうかな、とも思ったんですが、女の子が「水割り?」と訊いてくるので、つい「ロック」と言ってしまいました。 

で、ロックがぶ飲みという狂乱じみた状態になっていくのですが、女の子たちも「ふだんは酔っぱらちゃうからあんまり飲まないんだけど」と言いつつも、ジンロなどを飲み始め、全体としてガガーッと盛り上がりを見せる展開となってきました。
お店自体はわりとシックな静かなお店なのですが、私たちの席だけが暴走を始めました。 

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今では学生さえやる人はいないであろう「一気」などという愚行も開始され、女の子たちの「飲んで飲んで飲ーんで!」の手拍子と共に我々はガガーッとロックを煽る、というどうしようもない状態になっていったわけです。
他の客の「何だ、あいつら」の視線を今でも思い出します。
でも、もう私たちの暴走は止まりません。

「私たち」と書きましたが、途中から私はその集団構成に異変が起きていることに気付きました。
友人がいないのです。

「あれ? Yは?」
「なんかトイレに行ったよ」
「結構長く行ってない?」
「そういえばそうだね」

友人はトイレで吐いていました
しかも、翌朝に分かったのですが、トイレから別の友人に電話をかけていました。その別の友人曰く、彼はこう嘆いていたそうです。 

 「オレもうやだ……こんなところに……いたくない……。きれいな子はみーんな○○さん(私)の方に行っちゃって、オレの方に来るのはこの世の終わりみたいな女ばかり……ゲエエ(吐いてる)」
しかし、そのことを知ったのは今朝のことで、彼はトイレで泣きながら吐いている中で、こちらではさらに暴走は続いていました。なにしろ、来る子来る子が美人ばかり。
ついに私は一人の女の子に場内指名してしまいました。アイドルでいてもまったく問題ないような美少女でした。
友人はしばらくして席に戻ってきましたが、その消耗しきった彼を待っていた言葉は、私の「延長しといたよ」でした。
こうなれば、私も悪魔です。

帰りに聞いたところによると、彼がトイレから戻ってきた時には、私は両サイドに美女を携え、正面にも美女が座り、お酒を注いで、みんなで

「はーい、次はMちゃんの番よ」
「いやーん、私もう飲めない。代わりに○○さん(私)の・ん・で」
「しょーがないなー。じゃー、はーい飲みまーす」

というようなハシャぎぶりの中で、私は死ぬほど楽しそうだったそうです。
「○○さん(私)が悪魔に見えた」
と彼は述懐しています。

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で、2時間、私はめいっぱい楽しむだけ楽しんでお店を後にしたわけですが、店を出た途端、友人が「まさか、このまま帰るなんて言わないでしょうねえ……」とジリジリと迫ってしました。

「まだ行く?」
「そりゃ、そうでしょう」
「でも、オレ、もう金ない」
「カードあるんで大丈夫ッ」
「しかし……」 

と言ってるうちに路上で彼はまた客引きと交渉し、「T」というお店に行きました。ここはオールタイム3千円の格安店です。
私としては、もうすでにさっきの店で大満足しているし「あとはどうでもいいや。今度はYが楽しんでくれれば、それでいいや」的な心境で入ったのですが、ここでも天国と地獄は残酷な形で待ち受けていました。

店に入って、すぐに友人の前に一人のオバサンが近づいてきました
「ん?」と私たち二人は顔を見合わせました。「なんだろう、このオバサンは? 給仕?」と思っていたら「○○○でーす。よろしくぅ」と手を差し伸べてきたのです。

「…………」。

私たちは沈黙しました。そして、私も酔っているとはいえ、ここはこの女の子、いやオバサンは私が引き受けなければいけないだろうという義務感に駆られました。
「じゃあ、どうぞこちらに」と私が彼女に促そうとしたその瞬間、そのオバサンの後ろに美少女が近づいてきました、ボーイが「○○さん、ご紹介しまーす」と、勝手に私の隣に座るように促してしまったのです。

ここで態勢がハッキリしてしまいました。あのオバサンは友人の方に行くのです。
「いや、しかし、それでは……」と、友人の方を見ると、彼は「フッ」という諦観に満ちた笑みを浮かべていました。

私についた女の子は顔も性格もいい素敵な人でした。そして、友人についた女の子、いや女性は………………。
私はたまに友人の方に視線を配っていましたが、終始、諦観に満ちた顔で、しかも彼は「」を飲んでいました。

「お酒飲まないの?」ときくと、
「フ…………」と、水をゴクゴクと煽りました。

私と彼がそれぞれ天国と地獄を歩いているということはあからさまでした。
店を出ると、もう午前2時を回っていました。
二人でラーメンを食べたのですが、その時に彼はボソッと「このラーメンが今日の一番の収穫だな」と呟き、帰りに名刺を路上に捨てました。