3千円おじさん

  

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厳密にいうと、この人はぜんぜん変なお客さんなどではありません。ごくごく普通のお客さんです。しかし、我々の大部分が持つ、ある典型的な共通項「お金はあまりないが希望はかなえたい」という事象をあからさまに具現している人であるということはいえます。

そのお店では有名なオジサンです。

キャバクラはどこでも、時間区切りの料金推移をしていきますが、このあるお店は「6時45分〜7時まで3千円 7時〜8時30分まで5千円 8時30分以 降7千円」という料金移行をしていきます。パッと見ただけではお気づきにならないかもしれませんが、3千円の時間帯に注目してみて下さい。

午後6時45分〜午後7時 となっています
これはつまり、3千円の時間帯が15分間しかないということになります。

これが「いちおうは3千円の時間もあるんだよ」ということを言いたいのか、逆に「3千円の人なんか相手にしてないんだよ」ということを暗に示しているのか、そのあたりの意図は分かりませんが、いずれにしても、3千円でお店に入りたい人は、午後6時45分から7時まで、という実に限られた時間に入店する必要があるわけです。

そのお客さんはいつも6時55分から58分くらいの、かなりギリギリの実に微妙な時間にお店に走り込んできます。そして、店に入った途端、「え、まだ7時前? まだ3千円なの?」という演技をします。週に3回程度は来ているのに、この演技をします。これだけなら、まあ、仕事が6時とか6時半頃までの人で、いつも懸命に急いで来ているんだなあ、という目で優しく見守ってあげることができますが、このオジサンが実は午後6時30分頃には既に吉祥寺の駅に佇んでいる姿を店の複数の女の子に目撃されています

彼は午後6時50分くらいまでジッと待ち続けます。「45分頃に時計を見つめ続けていた」という女性従業員の証言もあります。そして、午後6時55分前後に駅から店にダッシュをかけます。駅から店までは1分かかるかどうかでしょう。エレベータに乗って店内に到着すると、ちょうど前述した午後6時57〜58分くらいという絶妙な時間帯になるわけです。

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「素直に開店と同時に入ってはどうか?」という意見もあるでしょう。
私もそう思いました。しかし、オジサンにはこの時間でなければならない理由がありました

指名の女の子がいるのです。しかも、彼の指名している女の子はこのお店のナンバー1です。
誰でも分かることですが、ナンバー1の女の子ともなると、大体は同伴で店に入るのが普通です。そして、同伴だと普通の出勤よりはどうしても遅くなります。このお店では同伴の場合だと午後7時30分までに入店すればOKという感じになっていて、そのナンバー1ギャルの出勤は大体毎日、午後7時30分ということになります。
出勤して着替えて、店内に戻ると、7時50分くらいにはなります。

前述したオジサンは決して延長をしません。つまり、店にいられるのは午後7時57〜58分頃まで、ということになります。この微妙な測り具合がお分かりでしょうか。

つまり、3千円入店で指名しているナンバー1ギャルと会える確率としてのギリギリの時間帯を選んで入店しているのです。

午後6時50分前にお店に入ってしまうと、ナンバー1の女の子と会う確率はほぼ0%ですが、午後6時55分〜6時59分までに入れば、ほんの少しその女の子と会える確率が上がるのです。

そして、あと3〜4分遅れて入店してしまうと、3千円が5千円になってしまう。それだけは避けたいということのようなのです。しかし、実際には思惑は外れることの方が多くて、会えないことの方が多いようです。「見送りだけに来る」などという場合もあるようで、その場合には指名料1千円は返してもらえるわけですが、オジサンとしては2分でも3分でもいいから、その子と会いたいに違いありません。
こうしてこのオジサンの奮闘は日夜続いている、ということのようです。

直接の知り合いでもなんでもないこのオジサンに何のアドバイスもあげられるわけもないのですが、個人的には立ち回り方としては間違った方向に行っていると断言せざるを得ません。オジサンと、もしコミュニケーションが取れるチャンスがあれば、

・週に4千円(指名料込み)で3回来ているのなら、週に1万2千円の資金があるということになる。

・それなら、週3を週2に変えれば、5千円の時間帯で1時間ずつ遊べるし、指名の子といられる確率も飛躍的に高くなる。

・更に週3を週1に変更すれば、同伴も可能となる(この店の同伴料は一括で8千円)。

・何よりその時間帯にナンバー1の女の子を指名すること自体に無理がある。

・それよりも何よりも周囲には激安店が密集しているのだから、他の店を検討してみてもいいのではないか。


ということを提言したいと思います。

オジサンの行っている店はビルの2階なのですが、そのビルの5階には午後7時30分〜8時30分まで1時間2千円というお店があります。同じビルの4階には午後8時まで税別50分1千円というお店もあるのです。
確かにそのオジサンは、そのナンバー1の女の子のことが本当に好きで好きでたまらないのかもしれません。でも、オジサンのこのお金の使い方にナンバー1の女の子が惚れ込むことは地球が滅んでもありません。そのナンバー1の女の子を見たことがあります。それはそれは実に可愛らしい美少女です。それだけに、オジサンに思い出してほしい日本語があり ます。「不相応」 という言葉です。彼女と相応になるためには、ルックスでの勝負が駄目だと分かったのなら、壮年に残された道は財力しかありません。

多分、他の彼女の指名客……つまり、彼女と同伴やアフターを繰り返しているお客さんたちには、この「財力」があるのです。オジサンが一晩で3千円しか使えない身なら考えてみるべきでしょう。3千円でも歓迎してくれるお店を模索してもいいのではないか、と。一晩3千円で演技をしなければならないお客と、5万円使っても何でもないお客との間の溝を少しでも埋めるためには策略と奸計しかありません。


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使える金額が定められていて、それを守ることは決して悪いことではありません(守らない、というのも男らしくて嫌いではありません)。そして、その範疇で破綻をきたさない計画を立てるということも大事なのではないかと思います。

自分の第一希望ばかりを最優先してしまったばかりに、このオジサンは「3千円オジサン」などとお店の女の子から言われることになってしまったわけです。
週に1万2千円の予算があるなら、十分にリッチな振る舞いも可能です。