その後の客引きM君

  

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なにしろ、このホームページは吉祥寺でだけ遊び続けている人物の狭いフィールドの中での話ですから、話題も似たようなものが多くなりますし、登場人物も似通ってきてしまいます。今回登場するM君という客引きは、このコラムの「ある客引きとの対話」に出てきた客引きの青年です。そして、関連するお店が、ちょっと前に書いた「チャレンジャーたち」に出てくる新規店です。
ということを念頭にお読み下さい。本当に狭い範囲の話ですみません。

M君のコラムの書いたのは日付を見ると、昨年6月になっています。コラムに出てきた時は、O店の客引きをやっていて、その後も最近までずっとO店の客引きをやっていました。
表面的には同じ客引きですが、内部的にはボーイとしての階級はどんどん上がっており、最終的にはO店の営業主任だか何だかよく分からないですが、そのあたりにまで登り詰めました。去年の暮れに会った時に、

「オレ、店長目指してますから」

と言っていて、わりと上昇志向のある青年でもあるのですが、この上昇志向には具体的な理由もあって、やはり昨年の秋頃の、

「オレ、できちゃったんですよ

というところにその原因はあります。「できた」というのは子供です。遊んでいた女の子のうちの一人を妊娠させてしまったということでした。しかし、今時の 若者にしては「堕ろせ」などとは決して言わずに、彼はちゃんと出産させてあげました。昨年の暮れの頃だと思います。つまり、

「オレも親父になったんだから頑張りますよ」

ということになっていたわけです。ちなみに彼は確か23歳です。
O店は吉祥寺北口にあり、南口を歩いている分にはM君に会うことはないはずなんですが、先日、最近頻繁に通っている南口のあるお店からの帰り、「アニキー!」と言って笑顔の青年が走ってきました。この世に私のことを「アニキ」と呼ぶ人物は一人しかいません。

「M君? 何やってんの。店変わったの?」
「オレ、今度、そこに新しくできたF店の店長になったんですよ」

と言ってきたではないですか。
ついにM君は夢を実現したわけです。F店は最近できた新規店です。
時間はもう午前3時くらいのとんでもない時間だったんですが、

「ウチ、5時までだし、新規だし、閉店までで5千円でいいっすよ。ぜひ来てください!」
「ま、いいか。ご祝儀ってことで」

ということで、行くことにしました。
新規店。
オープンサービス記念中。
さぞや、店も賑わっているだろうと思い入ると、客は0でした。つまり、私一人の入場ということになります。

き……客、いないじゃん

私はM君に言いました。

「いやーなんかねー。さっきまでは混んでたんですけど(これはウソであることが後で女の子の話から判明。終日ガラガラだった模様)。ま、いい子つけますから」

私は、この店の前の前の店によく通ってました。ちょうど2年前の話です。その店内がとても懐かしく感じました。

「いやー懐かしい……じゃないよ。これ、ソファーも壁も全部同じじゃねえか!

という事実に私は気付きました。この店の前にも別の店がここで営業していたんですが、つまり、その店もこの店も、2年前に潰れた店の店内装飾をそのままに流用している可能性がきわめて高いわけです。もちろん、記憶は鮮明ではないので、細かい部分には改装を加えているのでしょうが、少なくとも店内の雰囲気は同じです。

しかも、この店ができた頃に看板を見ていて、この店の通常の料金システムを知っているのですが、ここは午後10時まで5千円、午後10時以降7千円で、しかも50分です。南口周辺のお店と比較しても、全然リーズナブルな料金ではありません。

「うーん」

唸らざるを得ないところです。
店には私が帰るまで誰も来ませんでした。私も「閉店まで」と言われてはいましたが、誰もいない中で閉店まで居座り続ける気にもならず、適当に店を出てきました。ちなみについた女の子は極度に普通の子でした。
M君にはこれからも頑張ってほしいところですが、私がM君に先導されてこの店に入ることはもうなさそうです。
ともあれ、M君に幸あれ。