注文の多いキャバクラ店

洒落たタイトルにしようとしたんですが、かえって異常に泥くさいタイトルになってしまいましたね。まあ、タイトルはどうでもいいんですが、要は先日、久々にかなりドリンクのおねだりのキツいお店に入ってしまった話です。
8月の末から9月の頭位までの10日間ほど私用で忙しくて、ぜんぜんキャバクラに行ってませんでした。つい先日ですが、やっと暇になって、その夜は地元の飲み屋で友人たちと飲んでいたのですが、午前12時ころ解散ということになり、友人たちはそれぞれ帰っていきました。私もその飲み屋からなら歩いて2〜3分で帰れます。しかし、私はふと気付くと、もう当然というように電車に乗って吉祥寺に向かっていたのでした。
その日はふだん指名している女の子たちが誰も出ていない日で、どこか適当にフリーで入ってみようと吉祥寺の街を歩いていました。
小雨が降っていたせいなのか、いつもなら執拗に追尾していくる客引きの姿もなく、たまに寄ってくるのは「60分5千円でどうですか。……あ、ダメですか? じゃ、3千円。……あ、待ってください。じゃ、2千円」(どんな値引きの仕方だ)というような得体の知れない客引きや、暗い目をした青年が亡霊のように耳元で 「新規です……新規のお店なんです……きれいな……女の子が……たくさん……」 と呟くように話しかけてきて恐くなったりして、どうも「この人についていこう」という気にさせる客引きがいなかったので、南口をどんどん歩くと、駅からかなり離れたところで「A」という店の客引きが声をかけてきました。初めてのお店です。
「50分3千円でどうですか」と彼は語りかけてきました。夜12時を過ぎていることを考えると、かなり安い値段です。迷っても仕方ないし、駅の方に戻っても、またあの暗い青年に声をかけられる位のことしかないだろうと思い、「A」に入ることにしました。
きれいなお店でした。
専属のウエイトレスさんがいるというのも高級感を感じさせて、店の作りとしてはかなり評価できると思います。客層は私が入った時点では全員、背広姿のサラリーマンで、ネルシャツ一枚でフラフラと入って行った私はかなり目立ったかもしれません。
女の子はすぐにやってきました。
「はじめまして、Yでーす」。
「あ、はじめまして」
と挨拶が終わって、彼女が着席した途端、
「なんか飲んでもいいですか?」ときました。
一瞬、ビクッとしました。最近、私の行く店は飲み物のおねだりがキツくないところばかりだったせいもあるし、何より、指名でも何でもない女の子がドリンクを頼むまでの間がこんなに短くていいのか、とアセッたわけです。
出会いから最初のドリンクを頼むまでに30秒もかかってないと思います。
私はちょっと躊躇の表情を見せつつも「あ……まあ……どうぞ」と、彼女に生ビールを一杯ごちそうしました。その生ビールで乾杯。「私、お酒ならビール党なの」などと言いつつ、彼女はググーッとその生ビールを飲み干しました。数分、話をした後に、またすぐに
「なんか飲んでもいいですか?」。
ちょっと待て、と素直に思いました。
これは今時のキャバクラとしては何だかおかしいという気もしてきたので、彼女に正直に聞いてみました。つまり、ドリンクが給料のポイントに深く関与しているのかどうか、ということをです。彼女は「うん」とあっさりと答えました。指名や場内と同格程度にドリンクが位置しているらしいのです。あんまり詳しく聞くのもアレだったので、1杯が何ポイントになるのか? などの質問はしませんでしたが、この店はとにかく店の方針として、積極的に女の子にドリンクのおねだりの励行を促しているようなのです。
見回してみると、店に座っている女の子で、目の前にドリンクがない女の子は一人もいません。
「うーむ」。
私は唸りました。
そして、とにかくこの店での行動指針を決めなければ、と思ったわけです。この調子でドリンクのおねだりが続くと、50分3千円など安くもなんともないことになります。それに今の段階ではフリーのわけだし、女の子がコロコロとチェンジして、同じことの繰り返しでは、何か恐ろしい結末が待っているような気もします。
まず、私がとった戦術は「場内」でした。とにかく、女の子はこの子だけに留めておき、それによって生じる時間的な空白状態の中で、次の行動指針や戦略を決める精神的・時間的な余裕を作ろうという作戦に出たわけです(戦争か)。
この店は場内指名も不思議なシステムで、「2時間2千円」という場内指名システムでした。「場内するなら延長は当然なんだよ」的なニュアンスが感じられる強気のシステムです。
この時点で3千円+ドリンク2杯2千円+場内指名2千円と、すでに7千円になっています。近鉄裏あたりにフリーで入った方がずっと安かったということになってしまっていたのです。
とにかく、2杯目の生ビールを飲んでいる彼女と話をしました。ちなみに、この女の子自体は決して悪い子ではなく、むしろかなりいい性格の女の子に属する子です。本職は看護婦さんだという22歳の彼女は、夜のバイトはこの店が初めてで、まだ1ヶ月ちょっととのことでした。つまり、彼女にしてみれば、この店のシステムしか知らないわけで「キャバクラというのはこういうふうにドリンクをどんどん頼むものだ」という意識しかないわけです。
そんな彼女の意識を混乱させても仕方ないので、ドリンクについては何も言いませんでしたが、3杯目の「なんか飲んでもいいかな?」発言の際に、ついに我々は衝突しました。
「あのね。どんなお店でも1時間で3杯も飲み物頼む人なんていないよ」と素直に言いました。
彼女は「うそー。ここ普通ですよ」
と恐ろしい言葉を返してきましたが、ここでひるんでいちゃいけないと、「仮に延長したら、もう一杯いいけど、最初の1時間で3杯も奢るのはダメ」とはっきり言いました。彼女は「そうですか」とだけ言って、また普通に会話に戻っていきましたが、おねだりを断る時には客側にも精神的なダメージが少しは残ります。
私は次第に憔悴していきました。
軽い気持ちで遊びに来ただけなのに……。という想いが私を支配し始めていました。
そして、延長の時間がきました。ここで延長するのも何だかアレですが、ボーイさんが「今日は延長分も料金はサービス料金でいいですよ」と言ってくれたので、つい延長してしまいました。
その後は約束通りに一杯奢りましたが、彼女は「もう頼まないから大丈夫」と、何が大丈夫なのかはよくわかりませんが、とにかく大丈夫ということなので、そのまま1時間過ごしました。
話せば話すほど、とてもいい子で、それだけに「この子が他の店にいてくれたら」と思いました。ちなみに、かかった費用自体はご新規料金のせいで、2時間で1万3千円程度でした。このうち3千円がドリンク代です。
店の方針は様々でしょうが、ドリンクを奨励するよりは「営業頑張るように」という煽り方をした方が、むしろ客にとっての精神的な負担が少ないのではないか、と、しみじみ思ったお店でありました。
ちなみに、今回の内容とは全然関係ないことですが、その子によると、ここはお店の方針で18歳とか19歳などのティーンを中心に採用しているのだそうで、全体の年齢層は20歳に届くか届かないかという超ギャル店でもありました。確かに私についた子はともかく、まわりの女の子たちは揃いも揃って、金髪ギャルの群れで、お客さんも若い子目当てで来る人がほとんどなのだそうです。
最近、よく行っていた店は、女の子が平気でハウスボトルを飲むような店だったので、久しぶりにドリンク問題に直面した日でありました。
