フィリピンナイト2 南国の黙示録
先日、初体験したフィリピンパブ。
「また行っちゃうんじゃないかなー」という危惧はやはり現実のものとなってしまいました。つまり行っちゃったんですね。
最初は行くつもりなどは少しもありませんでした。しかし、その店のある通りを歩いていたら、前に私を声をかけてきた中国人の青年が、また声をかけてきたのです。
この青年は本人曰く、留学生ということで、将棋の羽生に酷似したマイルドタイプの青年です。彼の背後でうずまいているであろう、様々なドロドロとはまったく無縁のようにも見える人でした。押しが弱いし、とても客引き向きではないのですが、そこが逆に「オレが入ってやんないと、この人、誰も引けないんじゃないか」と母性本能的な部分をくすぐる人でもあります。
彼は私の横にすばやく寄り「お客さん今日はラッキーね」と言いました。
当然、私は「何が?」と答えます。
すると「今日、最初の30分、1千円ね」ときました。
この店の客引きやボーイさんの言う言葉が正しいことは前回の同店行きで証明されています。確か、この店は1時間3千円程度だったはずなので、30分1千円のスタートなら2時間くらいいても1万円以内で済むはずです。
「ま、いいか」。
その程度の気持ちで入りました。時間は午後10時過ぎ。1〜2時間飲んで終電くらいで帰ろうと思っていました。
大それた気持ちなど少しもありませんでした。
それがあんなことになろうとは…。
30分1千円というイベントデイ。さぞや店内は混んでいるだろう……と思っていたら、店内はガラガラでした。
とりあえず、女の子が一人紹介されました。フィリピンの方です。前に来た時にもついた子で、美形は美形なのですけれど、態度の方はちょっとアレだったという記憶があります。で、まあ適当に挨拶などしていると、また次の女の子がやって来ました。こちらもフィリピン人で、とてもシャイな性格の子でした。ルックスはともかく、好感がもてる子です。
「ふたりもつけてくれて悪いなあ」と思っていたら、また一人やってきました。この子は中国人です。パチンコやパチスロならいくら出してくれてもいいのですが、キャバクラでは「ただたくさん出せばいい」というものでもありません。さすがに女の子を3人もつけられると、ちょっと対応に困るところがあります。
「うーむ……」。私は唸りました。
フォーメーションとしては、私の両隣にフィリピン女性が座り、テーブルの向かいには中国の女性が座るという態勢でスタートしたのですが、他のテーブルが空いて暇になると、気まぐれでこっちのテーブルに来たりする子もいるので、とにかく自分でも誰をどう相手していいのか分からなくなる事態にしばしば陥りまし た。
店にいる子は基本的に日本語が上手なのですが、それでも、仲間内での会話はタガログ語が主流です。基本的にフィリピンというお国柄、彼女たちの話すことのできる言語数はかなり多くて、英語とタガログ語は標準で、そこに日本で覚えた日本語が加わり、人によってはスペイン語も少し話せるのだそうです。地域によっては、英語もタガログ語も分からないという人もいないわけではありませんが、この店に限っては、大半がマニラ近辺の出身のようで「英語・タガログ・日本語3点セット」は共通する部分ではあります。中国人の女の子は留学生で、北京語と英語と日本語を話しました。
しかし、フィリピン人主体のこの店では、彼女の立場はあまり大きくないようにも見えました。もちろん、よくは分かりません。
途中経過ははぶきましょう。店内の様相は前回書いた状況とほぼ同じです。
ダンスとカラオケが主体で進行し、時には激しく、時にはダラダラと時間は過ぎていきました。
その中で次第に酩酊していく自分に気付いてはいましたが、しかし、必要以上に酩酊していたようです。
ある瞬間、なにげなく時計を見ると、なんと時計は午前3時を示しているのです。
私が入店したのは、確か午後10時前後。つまり、すでに5時間以上も私は店にいることになります。
「5時間……?」。
もちろんコールがない店ではありません。つまり、いくら酔っていたとはいえ、最低4回は延長に同意していたということになります。「オレって……」と、久々に私は自分を恥じました。そして帰ろうと決意しました。
しかし、その時に場の話は「どこそこにおいしい居酒屋があるネ」というような話になっていたんですね。
「もう3時だよ」
「帰るネ?」
「そりゃ帰らないと」
「飲み行くネ?」
「え? これから?」
「おいしい飲み屋さんある言ったネ」
「しかし……」
と思っていると、「私も行くネ」、「私も行くネ」と、アフター志願者が続けざまに二人名乗りを上げました。
もうこうなったら私もヤケクソです。
「よーし、じゃもう、みんなで飲みに行っか!」と言ってしまい、フィリピン人の女性3人とアフターすることになるという訳の分からない展開になってしまいました。
この店にはミーティングなどというものはありません。店長らしい人に「上がるネ」とだけ言って、店長も「いいよ」とだけ言い、それで何だかOKのようでした。しかも驚いたのが、この店には着替え室がないのです。店内にロッカーが2つ置いてあるのですが、そこに彼女たちの私服が入れてあり、コートを羽織ったまま、店内でお客さんがいる前で堂々と着替えていました。
ま、アフター自体は楽しいんだか楽しくないんだか分からない……というより、パブの雰囲気をそのまま居酒屋に持ち込んだ壮絶なものでしたが、いずれにしても、最後の女の子と別れたのが午前5時頃で、それぞれ電車で帰ることになりました。
ちなみに、店の料金は相変わらず大変安くて、5時間ちょっとで1万8千円だったと記憶しています(多分、最初の30分1千円+4時間1万2千円+あとはドリンクとカラオケ代だと思います)。
何にしろ、とにかくエネルギーを使いまくった夜ではありました。
【フィリピンGALこぼれ話】
ずいぶんと長いコラムになってしまいましたが、彼女たちの話は普通のキャバクラGALしか知らない私にとっては新鮮でしたので、もう少し続けます。
特に面白かったのは、彼女たちの給料についてです。
普通のキャバ嬢は時給制で、まあ東京なら1時間2500円とか、そういうのを月給としてもらったり、日払いでもらったりしているわけですが、彼女たちは違いました。
(というか、あくまで、この店での話です。他のフィリピン系の店がどうなのかは知りません)
簡単に書くと、
・半年(彼女たちの希望により3ヶ月)ごとに、まとめてフィリピンの実家に給料が送金される。
・彼女たちの生活費は、店から食費として一日1500円が支給されている。
ということになります。
こういう話を聞くと、どうしても、
「本当にちゃんと実家にお金送られてる?」
と訊きたくなるわけですが、みんなちゃんと実家にはお金が送られているようです。しかし、その具体的な金額は書きませんが、日本人の普通のキャバクラ嬢と比較して、格段に安い時給であることは間違いありません。もちろん、店の料金が安いということを考えれば、誰が良いとか悪いとか、何が正義が悪徳か(何書いてんだ)などはあまり考えない方がいいことのようでもあります。表もあれば裏もある。外国が絡めば、その様相はさらに複雑を極めてくることは当然のことで、我々としては、単に飲み客であるという立場だけを考えればいいわけで、「中間搾取」だの「ブローカー」だのという不穏な言葉を連想するのはヤメた方がいいのだろうな、と思います。
ちなみに、このお店でも、来た女の子のほとんどが名刺に携帯の番号を書いてくれます。ここに関しては普通の キャバ嬢と同じなのですが(誰名義の携帯なのでしょうね)、アフターに行ったうちの一人の子が「0...」と始まり、「ああ、携帯か」と思ったら、その後「019654876554.....」(こ れは仮です)と、えんえんと数字を書き始めて「おいおい、どんな携帯だよ」と思っていたら、「これ、フィリピンの実家の番号ネ。近くに来た時寄ってネ」と 言ってました。そうそう簡単に「近くに来た時」があるとは思いませんが、聞けば、1年に1度ほど帰省していて、その日が来るの をとても楽しみにしているようでした。
「今度、2月に帰るネ。マニラから車で40分くらいだから来るといいネ。いいとこネ」。
最近の日本人は外国人に対して、あまり堂々と「日本は良い国だぜい!」とは言いにくくなってきているのに対して、彼女たちは自分の国にとても愛着を持っていました。それだけはとても印象的なことではありました。