ボーイからの指導

  

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先日、キャバクラのボーイさんから「指導」を頂きました。
それほど長くはないキャバ歴とはいえ、かなりの回数でいろんなお店に通った私としても多分、初めての経験です。
指導とは要するに、

お客さん、うちの店ではそのようなことはちょっと……

という指導です。

他人では、むかし見たことがあります。泥酔したお客さんが女の子にさわりまくっていて、ボーイさんから再三の指導を受けていましたが、いっこうにやめる気配もなく、とりあえず、お店は強者の実力派を差し向けることで事態の収拾をはかろうとしていました。

しかし、昨日の場合はどうも解せないのです。
基本的に私は発言に関してはかなりどうしようもない人かもしれないですが、行動的にはまあまあちゃんとしている方で、少なくとも知らない女の子の体をさわるようなことは決してしません。
そして、昨日の場合は知らない相手ではなく、相当会っている相手でもあります。もちろん、だからといって、さわったりしていたというわけでもありません。
彼女との付き合いの中ではそういうこともありました。彼女が別の店にいた時の話ですが、泥酔して彼女の胸に顔を埋めて眠ってしまったこともあります(おいおい)。

そういう意味では付き合い上の慣れもあるし、確かに多少の接触はあったとは思いますが、昨日はさほど酔っていたわけでもないし、はたで見ていてキツいようなことには決してなってはいなかったはずです。

ボーイさんに指導を受けたあとで、うーんとちょっと考えていました。
女の子は、

「ごめんね。あの子、入ったばっかりで、仕事よくわかってないのよ」

と釈明しましたが、どうにも釈然としません。

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まだ花見のシーズンのせいなのか、店は大混雑で、さほど広くはない店内に多分40〜50名の男女がすし詰め状態で詰め込まれています。見れば、どの人も似たようなもので、みんな弛緩した笑顔で女の子と話し込んでいます。中には肩に手を回しているお客さんもいます。あれと私の差がわかりません。

というより、あのすし詰め状態の中でお客さんの誰かが何かやらかしたとしても、瞬時にそれを見抜くのは無理でしょう。
つまり、私はある程度の時間、彼の監視下にあったという可能性がもっとも高いと思われます。要注意人物だからこその直接指導だったということが考えられます。

指導が来た瞬間に起こっていたことは、確か、女の子が私の手を握ってきた時だったと思います。私からではありません。その子自体が比較的、肉体派の営業をする人で、彼女方面からの肉体的アタックがあったことは事実です。また、それに対して、ヘラヘラと喜んでいたのも事実ですが、レベルとしては他愛ないものです。

まあ、いずれにしても指導が入ったことには間違いないので、ちょっと彼女との距離を置いて、普通に話し出しました。
しかし、たまにボーイさんの方を見ていると、それでもチラチラ、チラチラとこちらを見ているのです。

「これはまさか……」

私は思いました。
あのボーイさんはこの子に気があるか、あるいはこの子とデキているかどちらかではないか、と。

2年くらい前の話になりますが、かなり似たような経験をしたことがあります。

ある店である女の子を指名していたのですが、彼女の指名が重なっている時になぜだかボーイさんがやってきて、私の席の前の椅子に座りました。彼は青山学院大学の現役の学生であるにも関わらず、キャバクラのボーイをやっていました。「家が近いからこのバイトしてるんですよ」と言ってましたが、かなりの美青年で、普通にいても非常にモテるであろう青年です。

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「○○(指名してた女の子の名前)、どうですか?」
「どうって……何が?」
「いや……いい感じですか?」
「どういう意味で?」
「いや……楽しくやってますか?」
「うん。いい子だし」
「そうなんです。いい子なんですよ」
「?」
「外で会ったりされてます?」
「いや……まだ」
「そうですか……」
「なんで?」
「いえ……自分ここで飲んでいいですか?」
「はあ?」
「ダメっすよね」
「別に構わないけど、店長に怒られるだろ」
「今、店長いないんす」

ちなみにこの店はきわめて小さい店で、男性従業員は店長とボーイふたり(うち一人は客引き専門)の計3名でした。客がいない時は店長も客引きに出て行くので、店内にボーイが一人だけになる、なんてことはよくあることです。

それはともかく、この青年は本当にそこに居座って、指名の女の子が帰ってくるまでいました。私は意味がよくわかんなかったのですが、まあ別に実害があるわけでもないし、放っておきました。指名の女の子が帰ってきて、彼女はボーイに「○○くん、何やってんの?」と言いましたが、彼は「いや、別に」とか答えていました。
しかし、これはどう考えても異常な行動としか言いようがありません。

この異常な行動の原因はすぐにわかって、つまり彼は彼女のことが好きだったのです。
ほどなく、ふたりは揃って店をやめました。
やめた後に女の子に電話してみると、

「××くん(ボーイ)に告白されちゃったの。私もいいなとは思ってたから……。バレないうちにふたりでやめようって」

とのことでした。
しばらくして、駅前で客引きをしている店長がいました。

「○○ちゃん、やめちゃったね」
「ええ」
「××くんとデキちゃったみたいだね」
「……ええ」
「ああ、知ってんだ?」
「……ええ」

店長にもバレバレでしたが、まあ、あれだけ小さい店で規則がどうのこうの言っても仕方ないんでしょうし、事実、この店長(まだ二十代)自身もお店の女の子に手を出していました(こら、店長!)。

ともあれ、昨日の指導にはその時と似たようなものを感じました。
これまでキャバクラでの職場恋愛をたくさん見てきましたが、どの場合もとても早いスピードで即決していっていたので、今回も私の予想が外れていなければ、早いテンポで進むと思います。
そんなレースに挑む気もないし、それならそれでいいのかな、とも思いました。
ボーイのレベルが高い店では日常的にそういうことが起こっているという事実は、キャバクラの一般論として認識しておきたいところです。
この前もあるお店で、そこのボーイさんにかなりの美青年がいて、ヘルプの子に「あのボーイさん、かっこいいねー」と言ったら

「そうなのよ。みんな狙ってんの」

と答えていた、というようなこともありました。
職場恋愛に関しては、店で規律を作ってもそれが守られることは至難で、どんな罰則規定を作っていても、お店をヤメてしまえばそれまでです。回避策としてはボーイのレベルを下げる、という消極策しかないのかもしれません。実際に、ボーイの質が著しく低いお店(やや高級店)があって、これはもしかして、そのへんに理由が? などとさえ思ってしまう私でした。

まあ、今回の指導は本当に私の態度に問題があったのかもしれないし、それは謎のままです。
謎の正体はそのうちわかります。