キャバクラ嬢に届かぬ想い
上のコラムでちょっと切ない話を書いてしまったのですが、話の冒頭に出てきた、最初の店。つまり、誕生日営業があって行ったお店で見たお客さんの話を書きましょう。
こちらは微笑ましい話です(そうでもないかもしれません)。
そこの女の子と知り合ったのも、やはり結構前のことで、1年半から2年くらい前の間のことだと思います。
Mさんとしておきましょう。
水商売のキャリア自体は長い子で、高級クラブに勤めていたんですが、ノルマのキツさのせいで、むしろ借金が増えてしまって、キャバクラに勤めはじめました。
今のお店の系列で働きはじめて、もう3年以上になっているはずです。
何度かお店のナンバー1にもなってもいる、とても綺麗な女性です。
でも、私の付き合い方はいい加減で、というより、彼女自身も現在は営業を放棄していて、営業もないから私もほとんど行かない、ということになり、お店に行くのは、せいぜい半年に一度程度です。メールでのやりとりはしていますが、プライベートで飲みに行くわけでもなし、何か色っぽい状況が現出しそうな気配もあるわけでもなく、単なる知り合いのキャバ嬢というだけではあるのですが、「誕生日にヘルプ回りも淋しいし」ということで飲みに行ったわけです。
店に行ったのは午後9時30分頃。
時は給料日直後の土曜日。
どう考えても、賑わっていてもいいのですが、店には私を含めて客は3人だけでした。
しかも、そのうちの私ともう一人はMさんのお客で、その二人の間をMさんが行ったり来たりするというだけの状況でした。
「このお店は大丈夫なのか」
という思いもないではなかったですが、そのことはいいです。
Mさん指名のもう一人のお客さんの話です。
この中年紳士はかなりMさんにご執心らしく、この日も誕生日だということで、午後8時の開店と同時に店に入ってきたのだそうですが、 Mさんは遅刻して、入店したのは午後9時過ぎでした。
お目当ての女の子がいないのなら、素直に帰ればいいと思うのですが、この人はそれをしません。
お目当ての女の子が来るまでヘルプの女の子を相手にじっと待ち続けます。
この日などは1時間の遅刻なので、まだマシですが、彼女によると、
「こないだ遅刻して、来たのが12時くらいだったのね。でも、あの人、8時からずっと待っててくれたんだよ」
とのことで、これはもう、
「待っててくれた」
というより、もう少し何とかうまい立ち回り方はないものかと考えてしまいます。
来ていないのなら、何時に来るのか電話で確認してもいいし、何よりいないのならその時点でとりあえずは入店しないというのが普通のような気がします。
お目当ての子がいる店に来て、4時間もその子のいない状況で飲み続けるというのは不毛以外のなにものでもないはずです。
遠くから見る限りでは、その中年紳士は粘着タイプのようで、ジトッとした目つきでMさんを見つめ続けていましたが、彼はその時点で不毛な出費を多大におかしてしまっているわけです。
「長いお客さんなの?」
「まあまあ長い」
ということで、彼の粘着ご執心活動はかなり長きに渡って続いているようで、しかし、無駄な出費を2万も3万もするなら、最初から同伴でもしたらどうなのか? という気もするし、こういうお客さんを見ていると、何だか男性の悲しさみたいなものも垣間見えてしまいます。
「それだけご執心なら、休みの日だとかにデートに誘われない?」
「誘われても行かないよ。休みの日は休みたいもん」
と、確かに彼女サイドから見れば素直な意見だし、一理ありますけれど、同時に、あの中年紳士の願いはたぶん成就しないのだろうな、と思うと、複雑な気分にもなった一夜でありました。