キャバクラ嬢とストーカーの問題
お客がストーカー化してしまう話はよく聞くことです。
しつこく電話がある、しつこく店に来る(これだけなら歓迎ですね)、待ち伏せされる、といった初歩の段階から、ひどい人たちになると、もっと徹底してしまうこともあります。
昔知り合いだったある女の子は、仕事が終わり部屋に戻ると、毎日同じ車が道路に停まっていて誰かがこちらを見ている、という状況が数日続きました。
ちょっと不安だったのですが、この時点では警察に言ったところで仕方ないし、とりあえず放っておいたのですが、ある日、この車の男は実力行使に出ました。
仕事帰りのある早朝、彼女はその車から降りてきた男に襲われそうになったのです。
男は客でした。
下手すると、そのまま車に引きずりこまれかねないほどの力ずくの状況だったそうですが、こういう時に周囲の人たちがどれほど頼りになるかを彼女は痛いほど知ったそうです。
襲われた時間は早朝4時頃で、通行人はほとんどいない住宅街。「もうダメだ!」と思った時に、新聞配達の青年が自転車で通りかかりました。たくましそうな青年でした。「助かった!」と彼女は思いました。彼女自体は口を塞がれていて、声を出せない状況だったそうなのですが、その新聞配達の青年はすぐその状況に気付き、そして……そのまま自転車で逃げていきました。
結局、彼女は自力で何とか逃げ出したのだそうですけれど、「いざとなったら、他人はアテにならないね」と彼女は言っておりました。私もこの時には相談を受けましたけど、この場合は立派な刑事事件ですし、警察に届けるべきなのですが、「あんまり厄介なことにはしたくない」という彼女の意見もあったし、いろいろと問題がある部分もあったので(実は彼女はその時点で未成年で、夜の仕事がバレるのはヤバかった)、警察には届けず、ただ引っ越しただけでした。
そんなわけで、やっぱり女の子は日頃からできるだけ危険な状況に陥らないための努力をするべきだと思うのですが、客商売をやっている限り、いろんな人が来るわけで、完全に危険を回避するのは不可能に近いものがあります。
最近もいろんな話を聞きました。
私の指名の女の子ではないのですが、ある女の子が最近、ストーカー的なアプローチに困っています。よく来ているお客がいて、電話もよくかかってきました。お店でも電話でも、適当に相手をしているうちはおとなしいお客さんでした。
ある時、かかってきた携帯を(よくあることですが)、ボタンの押し間違えで切ってしまいました。着信を見て誰だかは分かったのですが、「まあ、またかかってくるからいいか」と放っておいたら、その客は「自分だと分かってて切られた」と思いこんでしまったようで、それから一日何回も、携帯の留守電に「お前、ただじゃおかないからな!」というメッセージが入れられ、彼女が「あれは間違えて切れたのよ」と言っても、まったく聞く耳を持たず、「お前なんか潰してやる!」と喚くだけだそうで、ついには店にまで電話をかけてきて「○○○をクビにしろ。でないと、店ごとぶっ潰してやるぞ」と息巻いているそうです。
どうしようもないと言えばどうしようもない話ですが、彼女としても打つ術がなくて弱り切っているようです。もちろん、周囲の人間にもどうしようもありません。彼女に彼氏でもいればいいのですが、今はいません。
こういう問題になる芽の根元が、お客が持つ「キャバクラ嬢への錯覚」にあることは確かな気はします。
社交慣れしていない人ほど、この錯覚はひどくなり、「優しくしてくれたからオレのことが好きなはずだ」とか「楽しそうにしていたからオレに好意を持っている」ということになってしまいます。かといって、「あんたはただの客」と断言するキャバクラ嬢なんていないし、そんな女の子は人気になりません。お客の気を引くのが商売なのですから、表面上の好意を持って彼女たちは接しているわけです。というか、最初から敵意を持って接客してくる女の子なんていません。
表面上の好意が本物の好意かどうかを見破るのは簡単ではありません。
簡単じゃないのなら、「ぜーんぶ営業」と考えた方が気が楽というものです。
ただ、客も夜の仕事に慣れてくるとこの意識が強くなり、本物の好意も「どーせ営業」と蹴ってしまうことも起こりうることです。
これもこれでアレなんですけどね。
人の精神構造は様々だし、学説的には誰でもストーカーなってしまう可能性というのはあるものみたいですけれど、誰にも何にもメリットがない以上は、もっと効率的な立ち回りというのはあるとは思うのですが……。